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> 懸念される新県立美術館での藤田嗣治「秋田の行事」の展示

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2013.08.05
 昨年完成した新県立美術館に、平野政吉美術館収蔵の藤田嗣治の壁画「秋田の行事」などのコレクションが移転されるとのことだが、この美術館での展示には、多くの懸念がある。
 著名な建築家・安藤忠雄氏が設計したという新秋田県立美術館は、千秋公園方面を眺望できる水庭や螺旋階段に特徴があるようだが、コンクリート剥き出しの建物の外観が、温かさや開放感が感じられない。秋田らしさがない。三角形に拘ったデザインに、必要性が感じられない。四角い土地に三角の建物は、土地の無駄遣いだなど多くの批判的意見が既に出ているようだ。
 また、この美術館の問題の一つに、美術館が、賑わいづくりのためのイベント会場、屋台会場として使用されている「広場」に隣接していることがある。既にイベント開催時には大音響の音楽を流すこともあり、かなり騒がしい状況になっている。なぜ、この場所に美術館なのかという疑問を多くの県民、市民が内心思っていることだろうし、県外からの観光客も首を傾げるのは間違いないだろう。
 また、この美術館の入口は、仲小路方向に1ヵ所、コンクリートをくり抜いたようにあるが、駅方向だけを向いており、観光客のみを意識しているかのように存在している。秋田市の人口が、この美術館の入口とは反対の西側に圧倒的に多いことを設計者は認識していなかったのではないか。市民にとっては、不便な入口である。

 機能性が重視されず、設計者の自己満足が感じられる印象が強い新県立美術館だが、藤田嗣治の壁画「秋田の行事」を展示する予定だとされる展示室も、平野政吉美術館の展示室と比較し、多くの劣っている点が見受けられる。
 まず、展示室の広さにおいて、平野政吉美術館の約550平方メートルに対し、新県立美術館は、約440平方メートルになっている。これは、平野政吉美術館の展示室より、5メートル程手前からしか、「秋田の行事」を鑑賞できないことになる。縦3.65メートル、横20.5メートルの巨大壁画を観るうえで、この差は大きい。
 また、新県立美術館の展示室の天井高は、推定約7メートル程で、四角く区切られており、圧迫感がある。これに対し、平野政吉美術館の展示室の天井高は、約18メートルあり、しかも、屋根の形から生み出されたなだらかな曲線を描いており、上方への広がり、奥行きを一層感じさせている。
 藤田嗣治は「秋田の行事」を描くにあたって、三次元的空間、奥行き感を出すことに注意を払い、構図に様々な配慮をしていたことが既に分かっている。

(参照 藤田嗣治「秋田の行事」の構図と奥行き感、臨場感パリでの「乳白色」から、色彩と三次元表現の「秋田の行事」へ … 藤田嗣治の変貌

 平野政吉美術館の展示室が、藤田嗣治の壁画に込めた意図を忠実に表した空間であったことが分かるのである。
 また、体育館を思わせる茶色のフロア、薄茶の壁が、空の「青」、雪の「白」、祭りの「赤」が基調の色彩である「秋田の行事」と調和するとは、とても思えない。「秋田の行事」の展示には似合わない展示室である。

 また、新県立美術館の展示室の照明は、藤田嗣治が平野政吉に自然光による採光形式を助言したことを無視し、人工照明のみになっているが、この展示室では「秋田の行事」が平面的に見えることは間違いないだろう。
 先日のNHKテレビ(8月1日、クローズアップ現代)で放送された、伊藤若冲コレクションの第一者、ジョー・プライスさんも、ご自身の鑑賞室を自然光のみで観れるようにしていた。その理由を、自然光で観ると絵に奥行きが出るが、人工照明で観ると絵が平面的に見えることを挙げていた。
 藤田嗣治が、クロード・モネなど多くの偉大な画家と同じく、大壁画「秋田の行事」を自然光で観るよう、助言したのは、絵に奥行き感、臨場感を出すことを求めたためであることは間違いないだろう。

 その意味でも、平野政吉美術館の展示室は、藤田嗣治の意図を的確に反映しており、新県立美術館の展示室は不的確と言えるだろう。




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藤田嗣治は、壁画「秋田の行事」が完成した当時から、美術館は、自然光による採光形式にしたいという意向を持っていた。
1963年、平野政吉の親族に渡した美術館のイメージ図にも、壁画を大空間に展示し、上方から自然光を取り入れるよう描かれている。
1966年5月、美術館建設の報告に訪れた平野政吉に、美術館の屋根は採光の形式にするよう、助言している。

(参照 … 発見された「幻の藤田美術館」の設計図と、現県立美術館への藤田の助言を示すメモと手紙
平野政吉美術館(秋田県立美術館)の採光について
開催中の企画展「藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢」 …… 「なぜ この美術館が閉館なのか?」という疑問

(2015年9月)



新県立美術館に移された「秋田の行事」を観た方々から、

以前より展示室が狭くなった。
「秋田の行事」が、窮屈で縮んで見える。
階上の左右から見ることが出来なくなった。
照明の照り返しがきつい。
2階から見ると目線から高すぎる。3階から眺めると壁画が低すぎる。
展示室に奥行きがなく、この壁画の迫力が全く感じられない。
以前は圧倒するほどの存在感があったが、この絵の輝きが失われた。
新しい建物の現代的な感じと秋田の行事が違和感ある。
あそこへ行きさえすれば、という大きな拠り所が失われた。

などの声が上がっています。
(2014年2月)




 「秋田の行事」は8月31日に、平野政吉と藤田嗣治が一体となり建てた現県立美術館(平野政吉美術館)から移設されました。これは、世界に誇れる貴重な文化遺産を崩壊させる、非常に愚かな行為であり、一秋田県民として、強く非難致します。
(2013年8月31日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、建物を活用を検討していながら、2013年6月30日で閉館扱いとなりました。
 平野政吉と藤田嗣治が一体になり、実現させた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、後世の人々、美術愛好家、若者達、藤田嗣治ファンのためにも残すべきです。
(2013年8月1日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室は、「秋田の行事」のためにレオナール・フジタ(藤田嗣治)が助言したものです。
 

 ― 藤田は、「秋田の行事」を礼拝堂のような大空間で観るよう助言し、建物の上方から自然光を採り入れ、壁画に降り注ぐよう助言しました。また、壁画を床から1.8メートルの位置に上げ、両端を少しずつせり出して据え付けたのも、臨場感を狙い、藤田がこの絵に最も良い展示方法を指示したものです。藤田の理念が強く反映されている美術館、展示室は後世に伝えていくべきです。
(2013年5月15日)


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提言:新秋田県立美術館は、収蔵作品を持たない企画展に特化した美術館にすべきである。
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