Akita Column 評論
> 現県立美術館(平野政吉美術館)から藤田嗣治「秋田の行事」を移設すべきではない

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2012.07.09
 少し前の地元紙の「にぎわい再来」(2012年7月5日、秋田魁新報)という連載記事の中で、1967年(昭和42年)に、秋田市大町の平野家の土蔵から、藤田嗣治が制作した壁画「秋田の行事」が県立美術館に運ばれる様子を撮影した写真が大きく掲載されていた。わざわざ45年前の古い写真を一面に取り上げ、新県立美術館に「秋田の行事」を移設することを強調したいかのようであった。25万部という秋田県内一の発行部数を誇る秋田魁に大きく取り上げられれば絶大な宣伝効果があるのかも知れない。
 「秋田の行事」は縦3.65メートル、横20.5メートルの大きさがあり、5分割して運搬されたものの、現在の県立美術館に搬入する際、完成したばかりの美術館の側面を壊して中に入れたことが知られている。現県立美術館から「秋田の行事」を移設することはそのまま現県立美術館を壊すことに繋がることになる。そのようなことを安易にして良いのだろうか。
 現県立美術館(平野政吉美術館)は、藤田と平野のアイディアにより、館内の採光を考えた末、ギリシャ式柱廊と宮殿造りを折衷したデザインになっている。「秋田の行事」のための大展示室は、広さが500平方メートル、高さが18メートルある。このゆったりとした大空間で観ればこそ、壁画の大迫力を感じることができるのだ。安藤忠雄氏が設計したという新美術館の展示室は、広さ440平方メートルで、高さが推定で7メートル程度しかないようだ。現県立美術館と比較するとかなり狭い環境になり、現県立美術館と同様の迫力を感じることは不可能だろう。

 また、安藤氏の新美術館は内装が三角形をモチーフにしていると言う。現美術館の屋根が「三角屋根」だから、モチーフを継承したつもりなのかも知れないが、大きな勘違いである。
 現県立美術館は、正倉院を模した高床式、双曲線を描いた日本宮殿流れ式の屋根が特徴である。日本古来の建物の伝統的な建築美を踏襲している意匠がテーマになっており、「三角屋根」が強調されているわけではない。「三角屋根」という表現は、地元紙のコラムを書いている脚本家などが言っていただけである。現県立美術館と「三角形」は全く関連性がない。
 また、新県立美術館には「平野政吉コレクション」という表示も掲げられていると言う。公立の美術館に個人コレクションの名を併記し掲げることは、公共性から見て相応しいものなのだろうか。
 新県立美術館はあくまで県民のための県立美術館として運営され、平野政吉美術館は平野コレクションのための独立した美術館として運営される形が、最も良いのではないか。

 平野政吉が生涯を懸け、収集した藤田嗣治作品と、二人の友情と信頼関係を礎に藤田嗣治が秋田と平野政吉の為に描いた大壁画「秋田の行事」に相応しい展示、公開の場所は、平野政吉が藤田の助言を忠実に守り、情熱の全てを注ぎ込み、建てた現県立美術館(平野政吉美術館)であることは疑いようのないことだ。



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藤田嗣治は、壁画「秋田の行事」が完成した当時から、美術館は、自然光による採光形式にしたいという意向を持っていた。
1963年、平野政吉の親族に渡した美術館のイメージ図にも、壁画を大空間に展示し、上方から自然光を取り入れるよう描かれている。
1966年5月、美術館建設の報告に訪れた平野政吉に、美術館の屋根は採光の形式にするよう、助言している。

(参照 … 発見された「幻の藤田美術館」の設計図と、現県立美術館への藤田の助言を示すメモと手紙
平野政吉美術館(秋田県立美術館)の採光について
開催中の企画展「藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢」 …… 「なぜ この美術館が閉館なのか?」という疑問

(2015年9月)



新県立美術館に移された「秋田の行事」を観た方々から、

以前より展示室が狭くなった。
「秋田の行事」が、窮屈で縮んで見える。
階上の左右から見ることが出来なくなった。
照明の照り返しがきつい。
2階から見ると目線から高すぎる。3階から眺めると壁画が低すぎる。
展示室に奥行きがなく、この壁画の迫力が全く感じられない。
以前は圧倒するほどの存在感があったが、この絵の輝きが失われた。
新しい建物の現代的な感じと秋田の行事が違和感ある。
あそこへ行きさえすれば、という大きな拠り所が失われた。

などの声が上がっています。
(2014年2月)




 「秋田の行事」は8月31日に、平野政吉と藤田嗣治が一体となり建てた現県立美術館(平野政吉美術館)から移設されました。これは、世界に誇れる貴重な文化遺産を崩壊させる、非常に愚かな行為であり、一秋田県民として、強く非難致します。
(2013年8月31日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、建物を活用を検討していながら、2013年6月30日で閉館扱いとなりました。
 平野政吉と藤田嗣治が一体になり、実現させた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、後世の人々、美術愛好家、若者達、藤田嗣治ファンのためにも残すべきです。
(2013年8月1日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室は、「秋田の行事」のためにレオナール・フジタ(藤田嗣治)が助言したものです。
 

 ― 藤田は、「秋田の行事」を礼拝堂のような大空間で観るよう助言し、建物の上方から自然光を採り入れ、壁画に降り注ぐよう助言しました。また、壁画を床から1.8メートルの位置に上げ、両端を少しずつせり出して据え付けたのも、臨場感を狙い、藤田がこの絵に最も良い展示方法を指示したものです。藤田の理念が強く反映されている美術館、展示室は後世に伝えていくべきです。
(2013年5月15日)


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提言:新秋田県立美術館は、収蔵作品を持たない企画展に特化した美術館にすべきである。
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  • 2012.07.09(22:57)|評論||TOP↑
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