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2015.10.01
  2年前の平成25年(2013年)、戦前に計画されたものの第2次世界大戦のため中止され、幻となってしまった“藤田美術館”の設計図が発見されたと公表になったが、この貴重な資料は、画家・藤田嗣治が、壁画「秋田の行事」をどのように見せたかったかを伝えている。

 「秋田の行事」完成の翌年、昭和13年(1938年)、平野政吉は、秋田市八橋で、自ら収集した藤田嗣治作品を収蔵、展示する美術館の建設に着手したが、戦争のため、鉄材の使用が困難になり、やむなく中止となった。
 この美術館の詳細については長く不明であったが、先年(平成22年頃)、平野政吉の親族が、遺品の中から設計図(17種、30枚)を発見し、明らかになった。

 それによると、この未完の“藤田美術館”は、閉館された“平野政吉美術館”と同じような特徴を有しており、日本宮殿風の三角形の屋根の形状、壁画の前方に、十分に広いスペースが取られている。

 広い空間の展示室では、奥から壁画の全体像を一目で観れるように配慮され、同時に、壁画の前を歩きながら身近に鑑賞できるように工夫されている。

 このような藤田の構想、意図は、550平方メートルある広大な旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)の壁画展示室に生かされており、十分に距離を取っての鑑賞、壁画の目前での鑑賞を堪能できた。

 また、建物の上方から自然光を採り入れる形式も、“未完の美術館”と、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)に共通して見られる特徴である。


 藤田は、「秋田の行事」の制作当時の構想 (注) から、一貫して館内に自然光を採り入れる採光形式を重視していたが、“未完の美術館”の図面からも、建物上部から自然光を採り入れる形式がはっきり見られ、また、特徴的な丸い採光窓を有する、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)にも、それが認められる。

(注) 1936年 (昭和11年)7月 、藤田嗣治は美術館のイメージとして、「採光だけは洋風にとって、出来上り小さな三十三間堂といった感じのものにしたい」 (平野政吉美術館での企画展の説明文より) と語っている。

 昭和42年(1967年)に完成した秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、“未完に終わった美術館”の理念を継承した、共通の特徴を随所に有しており、藤田嗣治が、壁画「秋田の行事」をどのような意図で見せたかったのか、どういう美術館を志向したのかを、受け継ぎ、現在に伝える希有な美術館と言える。

 まさに、藤田の思いを継承する美術館なのである。

 残念ながら、平成25年に「秋田の行事」が移された新・秋田県立美術館においては、そうした藤田の意図は、継承されていないようだ。

 壁画展示室のスペースは440平方メートルで、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)の550平方メートルより20%も縮小され、旧・秋田県立美術館の約9メートル前方からしか「秋田の行事」を鑑賞できない状態になっている。

 また、新・秋田県立美術館の展示室で使用されているLED照明では、上方を見上げた際、照り返しがあり、鑑賞し辛いなどの不満が聞かれ、自然光が自然な厚みのある色で、絵を立体的に見せてくれる効果があるのに比べ、著しく「秋田の行事」の見え方が異なっている。

 藤田嗣治が、壁画「秋田の行事」をどう見せたかったのか、その思いを伝えていたのは、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室であり、新・秋田県立美術館の展示室ではそれが見られないのである。

 報道のように、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)を耐震補強の後、再使用する方向性であるならば、正当な、最善、最適な利用法は何なのかを考え、その大展示室に「秋田の行事」を戻すことを考えるべきでしょう。

 実は、そう考えている県民、市民や藤田嗣治ファン、美術ファンも相当多いはずである。




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藤田嗣治は、壁画「秋田の行事」が完成した当時から、美術館は、自然光による採光形式にしたいという意向を持っていた。
1963年、平野政吉の親族に渡した美術館のイメージ図にも、壁画を大空間に展示し、上方から自然光を取り入れるよう描かれている。
1966年5月、美術館建設の報告に訪れた平野政吉に、美術館の屋根は採光の形式にするよう、助言している。

(参照 … 発見された「幻の藤田美術館」の設計図と、現県立美術館への藤田の助言を示すメモと手紙
平野政吉美術館(秋田県立美術館)の採光について
開催中の企画展「藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢」 …… 「なぜ この美術館が閉館なのか?」という疑問

(2015年9月)



新県立美術館に移された「秋田の行事」を観た方々から、

以前より展示室が狭くなった。
「秋田の行事」が、窮屈で縮んで見える。
階上の左右から見ることが出来なくなった。
照明の照り返しがきつい。
2階から見ると目線から高すぎる。3階から眺めると壁画が低すぎる。
展示室に奥行きがなく、この壁画の迫力が全く感じられない。
以前は圧倒するほどの存在感があったが、この絵の輝きが失われた。
新しい建物の現代的な感じと秋田の行事が違和感ある。
あそこへ行きさえすれば、という大きな拠り所が失われた。

などの声が上がっています。
(2014年2月)




 「秋田の行事」は8月31日に、平野政吉と藤田嗣治が一体となり建てた現県立美術館(平野政吉美術館)から移設されました。これは、世界に誇れる貴重な文化遺産を崩壊させる、非常に愚かな行為であり、一秋田県民として、強く非難致します。
(2013年8月31日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、建物を活用を検討していながら、2013年6月30日で閉館扱いとなりました。
 平野政吉と藤田嗣治が一体になり、実現させた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、後世の人々、美術愛好家、若者達、藤田嗣治ファンのためにも残すべきです。
(2013年8月1日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室は、「秋田の行事」のためにレオナール・フジタ(藤田嗣治)が助言したものです。
 

 ― 藤田は、「秋田の行事」を礼拝堂のような大空間で観るよう助言し、建物の上方から自然光を採り入れ、壁画に降り注ぐよう助言しました。また、壁画を床から1.8メートルの位置に上げ、両端を少しずつせり出して据え付けたのも、臨場感を狙い、藤田がこの絵に最も良い展示方法を指示したものです。藤田の理念が強く反映されている美術館、展示室は後世に伝えていくべきです。
(2013年5月15日)


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現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の丸い採光窓

提言:新秋田県立美術館は、収蔵作品を持たない企画展に特化した美術館にすべきである。
現秋田県立美術館の展示室が優れているこれだけの理由


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