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2013.11.23
 藤田嗣治は、晩年、自ら描き残した壁画「秋田の行事」のための美術館を建設するにあたって、美術館建設を実現させようとしていた平野政吉に、教会のような大空間、建物の上方からの自然光による採光形式をアドバイスし、それらが守られ、実現したのが平野政吉美術館であったが、このような藤田の考え方は、実は、壁画「秋田の全貌」(後に「秋田の行事」と呼ばれる)が制作される以前の1936年(昭和11年)頃からあったものだった。

 1936年(昭和11年)2月に、藤田嗣治は、「現代壁画論」を著わし、当時の日本社会における「壁画」の必要性を述べ、メキシコ、フランスなどでの壁画作品の実情や、自身の壁画制作の遍歴などを語っている。

 その中で、藤田は「各県の県庁、物産陳列場等(著者注、公共施設等)にその土地の風俗、お祭り、ダンス、踊り、其他の産物等を壁画として描くことは紹介の最良策と考えて居る」と語り、これらは、そのまま翌年「秋田の全貌」に描かれた竿灯、梵天、かまくら(雪室)、秋田音頭を踊る踊り手、米俵、酒樽、木材などにも通じており、「秋田の行事」の制作意図が暗示されているようである。

 また、湿気が多く、さらに地震国でもある日本では、直接、壁に描く壁画は不適当であるとして、「カンバスを尤も理想的なものと考えて居る」と語っている。「秋田の行事」が、巨大なキャンバス画である理由には、このような藤田の容易周到な考え方、見識があったことが分かる。

 さらに、藤田は、壁画は絵画の作品とは異なり、技巧も特殊な方法でなくてはならないとして、

「広い面積と遠距離から眺める事、下方から見上げる事等の考慮を忘却してはならぬ特殊の遠近法、変形法誇張法(デホルメーション エキジアジレーション)、奇想構図等も独創的でなくてはならぬ」

と語っている。

 壁画制作において、広い面積と遠距離から眺める事、下方から見上げる事等の考慮を忘れてはならない、その目的にあった、独創的な奇想、構図、特殊の遠近法、変形法誇張法(デホルメーション エキジアジレーション)が必要だとしている。
 実際に、「秋田の全貌」には、藤田が意図する独創的な技法、構図が取られ、広い面積と遠距離から眺める事、下方から見上げる事への十分な配慮がなされている。

 当然、美術館なりの展示室においては、広い面積と遠距離から眺める事、下方から見上げる事への十分な配慮がなされていることが絶対的な必要条件であると言える。

 それらを考えると、平野政吉美術館の広さ550平方メートルの広い空間、見上げた際の高さ18メートルの天井を持つ展示室は、藤田の制作意図を反映した非常に意味のある展示場なのである。

 新県立美術館においては、壁画展示室の広さが、「秋田の行事」を鑑賞するうえで、狭く、遠距離から眺める事への配慮が欠如しており(約440平方メートル、奥行きが平野政吉美術館より9メートル短い)、十分に離れて観た時に分かる大壁画の全体の構図や、香爐木橋(こうろぎばし)を境にして変わる「静」と「動」の対比などを十分に理解、鑑賞出来るとは言い難い。
 また、下方から見上げる事への考慮が不十分で、天井が平野政吉美術館よりもかなり低くなっており(目測、約7メートル)、壁画を見上げた際、差し手が掲げる竿灯の棹や、石段を駆け上がる梵天の男たちなどが今にも画面を突き抜けて行くような雄大さを感じることが出来ない。

 藤田嗣治が、壁画制作において意図した「広い面積と遠距離から眺める事、下方から見上げる事等の考慮」が非常に良く反映されていたのが、今年6月に閉館になったと言う、平野政吉美術館であったのである。


<関連記事>
「壁画時代」の到来に意欲を燃やした藤田嗣治 ― 壁画「秋田の全貌」(後に「秋田の行事」と呼ばれる)は、藤田快心の壁画だった。

「秋田の行事」の展示状況



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藤田嗣治は、壁画「秋田の行事」が完成した当時から、美術館は、自然光による採光形式にしたいという意向を持っていた。
1963年、平野政吉の親族に渡した美術館のイメージ図にも、壁画を大空間に展示し、上方から自然光を取り入れるよう描かれている。
1966年5月、美術館建設の報告に訪れた平野政吉に、美術館の屋根は採光の形式にするよう、助言している。

(参照 … 発見された「幻の藤田美術館」の設計図と、現県立美術館への藤田の助言を示すメモと手紙
平野政吉美術館(秋田県立美術館)の採光について
開催中の企画展「藤田嗣治の祈り 平野政吉の夢」 …… 「なぜ この美術館が閉館なのか?」という疑問

(2015年9月)



新県立美術館に移された「秋田の行事」を観た方々から、

以前より展示室が狭くなった。
「秋田の行事」が、窮屈で縮んで見える。
階上の左右から見ることが出来なくなった。
照明の照り返しがきつい。
2階から見ると目線から高すぎる。3階から眺めると壁画が低すぎる。
展示室に奥行きがなく、この壁画の迫力が全く感じられない。
以前は圧倒するほどの存在感があったが、この絵の輝きが失われた。
新しい建物の現代的な感じと秋田の行事が違和感ある。
あそこへ行きさえすれば、という大きな拠り所が失われた。

などの声が上がっています。
(2014年2月)




 「秋田の行事」は8月31日に、平野政吉と藤田嗣治が一体となり建てた現県立美術館(平野政吉美術館)から移設されました。これは、世界に誇れる貴重な文化遺産を崩壊させる、非常に愚かな行為であり、一秋田県民として、強く非難致します。
(2013年8月31日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、建物を活用を検討していながら、2013年6月30日で閉館扱いとなりました。
 平野政吉と藤田嗣治が一体になり、実現させた現秋田県立美術館(平野政吉美術館)は、後世の人々、美術愛好家、若者達、藤田嗣治ファンのためにも残すべきです。
(2013年8月1日)



 現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の大展示室は、「秋田の行事」のためにレオナール・フジタ(藤田嗣治)が助言したものです。
 

 ― 藤田は、「秋田の行事」を礼拝堂のような大空間で観るよう助言し、建物の上方から自然光を採り入れ、壁画に降り注ぐよう助言しました。また、壁画を床から1.8メートルの位置に上げ、両端を少しずつせり出して据え付けたのも、臨場感を狙い、藤田がこの絵に最も良い展示方法を指示したものです。藤田の理念が強く反映されている美術館、展示室は後世に伝えていくべきです。
(2013年5月15日)


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現秋田県立美術館(平野政吉美術館)の丸い採光窓

提言:新秋田県立美術館は、収蔵作品を持たない企画展に特化した美術館にすべきである。
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  • 2013.11.23(06:00)|未分類||TOP↑
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